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社会福祉法人は社会福祉事業だけでなく公益事業や収益事業も行える
社会福祉法人は非営利法人ですが、社会福祉事業の他に公益事業や収益事業を行うことも可能です。ただし、「社会福祉と関係のある公益を目的とする事業」「収益を社会福祉事業や一定の公益事業にあてる」などの要件を満たさなければなりませんので注意しましょう。
また、社会福祉法において社会福祉法人が行える社会福祉事業は、第1種と第2種に分かれており、第1種社会福祉事業を行うことができるのは、国や地方公共団体、社会福祉法人のみとなります。
厚生労働省のWEBサイトで提示している社会福祉法人が行える主な事業内容は、以下の表のとおりです。社会福祉法において事業内容が制限されているので、社会福祉法人を設立する際は注意してください。
社会福祉事業 | 公益事業 | 収益事業 | |
---|---|---|---|
第1種社会福祉事業 | 第2種社会福祉事業 | ||
特別養護老人ホーム児童養護施設障害者支援施設救護施設など | 保育所訪問介護デイサービスショートステイなど | 子育て支援事業入浴、排せつ、食事等の支援事業介護予防事業、有料老人ホーム、老人保健施設の経営人材育成事業行政や事業者等の連絡調整事業など | 貸ビル、駐車場、公共的な施設内の売店内経営など |
- ※厚生労働省「社会福祉法人の概要」
株式会社との違いは利益を追求しないこと
社会福祉法人と株式会社の違いは、利益を追求するかどうかです。株式会社は営利法人であるため、事業活動を通じて利益を追求します。一方、社会福祉法人は非営利法人であるため、営利目的で事業を展開することはできません。収益事業を行う場合も要件があり、得た利益の使い道なども社会福祉法によって定められています。
ただし、社会福祉や地域福祉の発展という高い公益性、公共性が求められる社会福祉法人は、法人税、法人住民税、法人事業税といった税金が原則非課税となります。このような税金の優遇措置は、社会福祉法人のメリットといえるでしょう。
また、社会福祉法人は株式会社のように株式の発行ができず、資金調達の手段も寄附金や補助金などに限られますが、一般企業に比べて多くの補助を受けることができるのはメリットです。
社会福祉法人と、一般企業の中でも数の多い株式会社を比べたときの主な違いは以下の表のようになります。
社会福祉法人 | 株式会社 | |
---|---|---|
法人の種類 | 非営利法人 | 営利法人 |
事業の目的 | 社会福祉事業 (要件を満たせば公益事業や収益事業も可能) | 自由 |
設立に必要な人数 | 評議員7人以上、理事6人以上、監事2人以上 | 取締役1人以上 |
税金 | 法人税、法人住民税、法人事業税が原則非課税(収益事業については法人税の課税対象だが、軽減税率が適用) | 法人税、法人住民税、法人事業税ともに課税(法人住民税の均等割は赤字でも納付が必要) |
補助金 | 補助金の種類が多い。施設設備費についても一定の補助が受けられる | 補助金の種類が少ない。施設設備費の補助は受けられない |
なお、社会福祉法人が行う社会福祉事業のうち、第2種社会福祉事業であれば、経営主体に制限はありません。定められた認可や届出などの手続きを行えば、株式会社や合同会社でも第2種社会福祉事業を行うことが可能です。社会福祉法人のような税制面での優遇はありませんが、事業内容によっては一般的な会社の設立を検討してみるのも1つの方法です。
※株式会社の仕組みについては以下の記事を併せてご覧ください
社会福祉法人は地域に貢献した事業を継続することが求められる
社会福祉法人に必要なのは、制度化された事業だけにとどまらない公益的な活動と、事業を安定して継続させることです。
近年では、少子高齢化や核家族化、収入の格差の拡大などを背景に、従来の社会福祉制度によるサービスだけでは対応できない社会課題が浮き彫りになってきました。これから社会福祉法人を設立するなら、行政の手の届きにくい福祉サービスに注目し、地域で暮らす人々の悩みや困りごとを受け止めて、新たな福祉サービスを生み出すことが求められるでしょう。
社会福祉法人を設立する手順
社会福祉法人を設立するには、所轄庁の認可が必要です。また株式会社のような一般企業とは設立の要件や設立手続きが異なります。
例えば、株式会社の場合、会社のルールを定めた定款という書類を作成したり、法務局に法人登記を行ったりすれば、取締役1人でも会社を設立することができます。また、飲食業や建設業といった特定の業種を除けば、許認可申請も必要ありません。
しかし、社会福祉法人の場合は前述の認可の他に、設立に必要な人数や資格、事業内容で守らなければいけない要件があります。例えば、社会福祉法人の設立に必要な人数は、評議員7人以上、理事6人以上、監事2人以上が必要です。さらに、評議員と理事、監事はそれぞれ兼任することはできません。
また、社会福祉法人の設立準備は、まず、所轄庁である都道府県の福祉課といった窓口への相談から始まります。事前相談で社会福祉事業の計画が固まったら、定款や申請書類を作成し、提出します。
なお、所轄庁の認可を受けるのは登記申請の前です。社会福祉法人の設立手続きの流れは以下のとおりです。
社会福祉法人設立の流れ
- 行政と事前相談する
- 定款や申請書類を作成する
- 行政と事前協議する
- 所轄庁に認可申請する
- 登記を行う
事前相談の予約方法や必要な書類については、社会福祉法人の所在地を管轄する所轄庁に確認するようにしましょう。また、厚生労働省のWEBサイト「社会福祉法人の設立について」でも設立方法について紹介していますので併せて確認してみてください。
社会福祉法人を設立する際は要件を満たしておこう
社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立される民間の非営利法人です。社会や地域に貢献する役割があり、高齢者や子供、障害のある人の他、自然災害によって被災した人などを支援する事業を行います。
株式会社といった一般企業とは異なり、公共性のある社会福祉法人には税制上の優遇措置があり、利用できる補助金の種類も多くあります。
ただし、行える事業は社会福祉法に定められた事業に制限され、設立にあたっては法人の所在地の所轄庁の認可を受けなければいけません。福祉に関する業種の中には、株式会社や合同会社といった法人形態でも行えるものもありますが、社会福祉法人でしかできない事業もありますので注意してください。自分に合った法人形態を選んで起業の準備を進めましょう。