株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人 設立比較一覧表

社会福祉法人や財団法人は設立のためのハードルが高いため、障害者福祉事業の開業では、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人からの事実上の4者択一になるかと思います。なお、障害者入所施設は第一種福祉事業に分類され、運営するには地方公共団体か社会福祉法人のみとなる。例外的にNPO法人が運営しているケースもあるが都道府県知事の許可が必要である。

一覧表で比較した後、それぞれの法人についてコメントします。

次の項で、4つの法人の特徴についてコメントしていきます。

 株式会社合同会社NPO法人一般社団法人
漢字略称(株)(同)(特非)(一社)
カタカナ略称カ)ド)トクヒ)シャ)
事業目的自由自由主として20種類の特定非営利活動(収益事業も可)自由
成立条件登記登記所轄庁の認証後、2週間以内に登記登記
所轄庁なしなし都道府県、政令指定都市(その他権限移譲の場合も)なし
株式会社への移行可能不可不可
最低資本金1円以上1円以上資本金制度なし資本金制度なし
信用労務出資不可不可不可不可
定款印紙税40,000円(電子認証の場合は0円)40,000円(電子認証の場合は0円)0円0円
定款認証手数料等約52,000円0円0円約52,000円
登録免許税最低150,000円(資本金額×7/1,000)最低60,000円(資本金額×7/1,000)0円60,000円
発起人(出資者)の呼称株主社員社員社員
利益配当出資に比例自由不可不可
設立必要人数
(発起人)
1名以上1名以上10名以上2名以上
最高機関株主総会全社員の同意社員総会社員総会
出資者責任有限責任有限責任オーナーの概念なし有限責任
会社の代表者代表取締役代表社員理事長代表理事
役員取締役1名以上社員1名以上理事3名以上、監事1名以上理事1名以上
役員の任期10年以内任期なし原則2年理事2年以内、監事4年以内
決算の公開公告義務あり公告義務なし決算書類等を所轄庁に提出公告義務あり
税制全所得課税全所得課税原則非課税、収益事業課税○非営利型法人は原則非課税、収益事業は課税、
○営利型法人は全所得課税
特徴①所有と経営の分離
②株式公開(上場)を目指せる
①所有と経営が一致
②会社設立コストが最も低い
①役員報酬について独自の規制
②設立時や毎年、所轄庁への提出書類が膨大で労力
①法改正により、通常事業も可能に
②公的なイメージ

株式会社の特徴

株式会社は、「株式」を持っている株主と、株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益が出れば株主に配当します。
ただし、日本の株式会社の多くは中小零細規模で、株主と経営者が同じという会社が多く、したがって1名でも会社設立が可能です。

こんなケースは株式会社がお勧め

〇出資する人の一部が役員(経営者)として登記しない場合
〇役員(経営者)になる方の一部が出資しない場合
〇「株式会社」というネームバリューが欲しい場合
〇将来の事業展開のために、金融機関と付き合いたい場合

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合同会社の特徴

合同会社を一言で表すと、株式会社の小型版です。2006年会社法施行により新たに誕生した法人スタイルであるため、高齢の方々には認知されにくいと思います。

しかしながら、先に説明した株式会社が、制度創設時の趣旨と乖離した状況にあるため、現状の日本の中小企業設立には「お金を出す人」と「経営する人」が一致する合同会社が最も適していると言えます。

合同会社は、将来株式会社へ組織変更することができるため、小さく始めるには最適の法人です。設立のための実費印紙代も6万円と格安です。

こんなケースは合同会社がお勧め

〇出資者がそのまま役員(経営者)になる場合
〇設立費用を安く抑えたい場合
〇将来の事業展開のために金融機関と付き合いたい場合

NPO法人の特徴

NPO法人(特定非営利活動法人)は、本来非営利のボランティア活動を行う法人として誕生しましたが、実は収益事業を行うことも可能です。

4つの法人の中で唯一、法人の設立自体に行政庁の認可申請が必要となります。つまり、申請内容によっては設立が認められない場合がある、という意味です。

この認可を得た後、登記申請することになるので、通常は着手から登記完了まで6カ月程度の期間が必要となります。またNPO法人は自治体の認可法人であるため、登記内容の変更については原則市長の再認可が必要です。

決算後は税務署に法人税申告するだけでなく、市長に対しても実績報告を行い、その内容は広く公開されます。

NPO法人は以上のような手続き上の煩雑さがあるため、小規模の営利事業の運営には適さないでしょう。

こんなケースはNPO法人がお勧め

〇行政手続きの煩雑さが苦にならない場合
〇公益のために頑張って広く支援者を募りたい場合
〇訪問型事業や相談支援事業など開業資金があまりかからない場合
〇事業拡大をあまり重視せず、自己資金の範囲で活動する場合

一般社団法人の特徴

一般社団法人の特徴を一言で表すと、「2人以上の理念共有による設立」。株式会社、合同会社と異なり、そもそも「お金を出す=出資=資本金」という概念ががありません。よって所有やオーナーという概念もありません

NPO法人と同じく「非営利組織の代表格」と言われていますが、ここで言う「非営利」とは「利益を出してはいけない」ことを指すのでも、「給与を得てはいけない」ことを指すのでもありませn。

非営利とは「利益分配をしてはいけない」という事を指しているだけです。利益分配は株式会社でいう「配当」のこと。つまり働いていない人間に対して、不労所得を与えてはいけないという意味です。これはNPO法人でも同様の考え方です。

「一般社団法人」と聞くと設立のためのハードルが高そうですが、2人以上が理念共有し、設立印紙代11万円程度を支払うだけで、実は誰でも一般社団法人を設立することができます。

ただし、一般社団法人であることで、一部の信用保証協会融資や、政府の補助金対象枠から外れることがあるので注意が必要です。

こんなケースは一般社団法人がお勧め

〇「一般社団法人」のネームバリューが欲しい場合
〇訪問型事業や相談支援事業など開業資金があまりかからない場合
〇事業拡大をあまり重視せず、自己資金の範囲で活動する場合

定款について

 法人を設立する際に必ず定款を作成しなければなりません。そのなかにサービス名と「目的」を記載する必要があります。以下に例を載せておきますが、指定権者によって若干違ったりするので確認が必要です。

居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療育介護、短期入所、重度障害者等包括支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助のうち一部または全部を行う場合

(1)社会福祉法人
→「障害福祉サービス事業の経営」
(2)社会福祉法人以外の法人(特定非営利活動法人、一般社団法人、株式会社、合同会社等)

※労継続支援A型事業者が社会福祉法人以外の者である場合は、当該指定就労継続支援A型事業者は専ら社会福祉事業を行う者でなければならないので注意が必要です。

つまり、就労継続支援A型事業は、社会福祉事業以外の一般事業を行う法人では事業所指定されない、という意味です。

一般相談支援事業(地域移行支援・地域定着支援)を行う場合

(1)社会福祉法人
→「一般相談支援事業の経営」
(2)社会福祉法人以外の法人
→「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく一般相談支援事業」

特定相談支援事業を行う場合

(1)社会福祉法人
→「特定相談支援事業の経営」
(2)社会福祉法人以外の法人
→「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業」

児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援を行う場合

(1)社会福祉法人
→「障害児通所支援事業の経営」
(2)社会福祉法人以外の法人
→「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」

障害児相談支援を行う場合

(1)社会福祉法人
→「障害児相談支援事業の経営」
(2)社会福祉法人以外の法人
→「児童福祉法に基づく障害児相談支援事業」

移動支援、地域活動支援を行う場合

→「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく地域生活支援事業」